搾乳した母乳の解凍・温め方:安全に溶かして温めて飲ませる

凍った母乳はどう溶かして温めればよいのでしょう。冷蔵解凍を優先し急ぐときはぬるま湯で、電子レンジ・熱いお湯を避ける理由から、湯せんでの温め、脂肪の分離・残った母乳・再冷凍の扱い、夏の注意点まで公的な基準で整理しました。

冷凍庫にきちんと凍らせておいた母乳。いざ飲ませようとすると、迷いが始まりますよね。「これ、どうやって溶かそう?電子レンジで少し回してはだめ?温めて残ったら戻してもいい?」と急いで調べるほど、方法がばらばらでかえって迷うこともあります。

まず大きな流れをお伝えすると、凍った母乳は冷蔵室でゆっくり溶かすのがいちばん安心です。急ぐときはぬるま湯や流水に浸して溶かし、飲ませるときは温かいお湯で湯せんして体温くらいまでだけ温めます。ここでたった二つ、電子レンジと熱いお湯は避けることが大切です。ムラができて赤ちゃんがやけどをすることがあり、母乳の中の成分も傷むことがあるためです。

この記事では、解凍のしかたから温める順番、脂肪が浮くのは正常か、残った母乳と再冷凍はどうするかまで順番に整理しました。方法や時間の目安は母乳育児医学会などの公的な基準をもとにしています。保存そのものを何日・何時間まで置けるかが気になる方は、夏の母乳・ミルク・離乳食の保存の目安に保存時間の表として別にまとめてあるので、あわせてご覧ください。

横になって哺乳びんでミルクを飲む赤ちゃん

凍った母乳、どう溶かせば安心?

いちばん安心な方法は、飲ませる前夜に冷蔵室へ移してゆっくり溶かすことです。冷凍母乳の量によりますが、おおむね半日、12時間前後かかります。時間はかかりますが温度が急に上がらず、母乳の成分がいちばんよく保たれる方法なので、公的な基準でもこの冷蔵解凍を優先しています。

急いで今すぐ飲ませたいときは、もう一つ方法があります。凍った保存パックをぬるま湯や流水に浸して溶かすやり方です。水の温度が高くなりすぎないよう、ぬるま湯くらいに合わせてください。ある程度溶けたら温める段階へ進みます。

凍った母乳を安全に溶かす二つの方法を、冷蔵解凍を優先、急ぐときはぬるま湯の順で示した手順の案内図

やめたいこと:電子レンジと熱いお湯

早く溶かしたい気持ちから電子レンジを思い浮かべやすいですが、凍った母乳でも温める母乳でも電子レンジは使いません。電子レンジは部分的にムラができ、外はぬるいのに中は熱い「ホットスポット」ができることがあります。この熱い部分で赤ちゃんがやけどをすることがあり、高い熱は母乳の中の有益な成分も傷めます。

同じ理由で、煮立ったお湯や熱いお湯にそのまま浸すのも避けるほうがよいです。急ぐときほど、ぬるま湯と流水、この二つの中で対応すると覚えておくと安心です。

温める:湯せんで体温くらいまで

溶かした母乳は温かいお湯で湯せんし、体温に近いくらい、だいたい37℃前後までだけ温めます。器やコップに温かいお湯を入れ、その中に母乳びんや保存パックを浸して、温かさがゆっくり伝わるようにする方法です。赤ちゃんが飲みやすい温度は熱いのではなく「ぬるい」と感じるくらい、とだけ覚えておけば大丈夫です。

温めている間に層が分かれていたら、強く振らずやさしく回すか傾けて混ぜてください。温め終わったら、飲ませる前に腕の内側や手首に数滴たらして温度を確認します。手の甲より皮膚が敏感な場所なので、温度を確かめやすいためです。温かいと感じれば大丈夫、熱く感じれば少し冷ましてから飲ませます。

溶かした母乳を温かいお湯で湯せんしたあと、やさしく混ぜて手首で温度を確認する温めの順番を段階で示した案内図

授乳のあとのげっぷをどうさせるか、空気をあまり飲ませないためにどう含ませるかも一緒に気になるなら、新生児のげっぷ、空気を飲ませにくくする飲ませ方も参考になります。

脂肪が浮いて層が分かれました、傷んだの?

保存しておいた母乳が上下に層に分かれ、上に黄色い油膜のようなものが浮いていると、傷んだのではとどきっとしますよね。ですが母乳の脂肪が上に浮いて層に分かれるのは自然なことです。時間がたつと脂肪と残りの成分が分かれるだけなので、やさしく混ぜればまた均一になります。

ここでもコツは強く振らないことです。強く振ると泡が多くでき、母乳の成分にも負担になることがあります。びんを手の中でやさしく回すように混ぜるくらいで十分です。

層の分離と本当の「傷みのサイン」は分けて考えておくとよいです。すっぱいにおいや傷んだにおいがしたり、味がおかしく感じたりする場合は、層の分離とは別の問題のことがあります。においや味がおかしいと感じる母乳は、もったいなくても飲ませず廃棄するほうが安心です。判断に迷うときは無理に飲ませるより、新しい母乳を使うほうが安心です。

残った母乳と再冷凍、どう扱う?

温めたあとに残った母乳をどうするかも、よく迷うところです。ここには必ず守りたい線が二つあります。

一つめ、一度解凍した母乳は再び凍らせません。溶かしてまた凍らせると、成分や衛生の面で負担が大きくなるため、再冷凍はしないのが公的な基準です。ですから最初に凍らせるときから1回分ずつ小分けにしておくと、捨てる量を減らせます。

二つめ、赤ちゃんが口をつけたびんに残った母乳は、その授乳が終わったら廃棄します。赤ちゃんの口の中の唾液がびんに入り、細菌が増えることがあるためです。温めただけでまだ赤ちゃんが口をつけていない母乳なら目安の時間内に使えますが、口をつけたあとに残したものは、もったいなくても片づけるほうが安心です。

凍った母乳を温めるとき電子レンジ・熱いお湯は禁止、再冷凍は禁止、口をつけた残りの母乳は廃棄をまとめたやめることカード

結局、解凍した母乳は決めた時間内に使い、再冷凍はせず、口をつけた残りは捨てる。この三つがほぼすべてです。冷蔵・冷凍・常温でそれぞれ何時間、何日まで置けるかの時間の目安は、先に紹介した保存の目安の記事に表としてまとめてあるので、あわせて参考にしてください。

夏はこれだけ気をつけて

基本の方法は季節を問わず同じです。ただし夏は常温に置く時間を特に短めにするのがよいです。気温が高いと母乳もそのぶん早く変わることがあるためです。

  • 解凍したり温めたりした母乳を常温に置く時間を最小限にします。準備したらすぐ飲ませる流れが安心です。
  • 外出時に母乳を持っていくなら保冷バッグと保冷剤に入れて涼しく保ちます。
  • 車内のように温度が急に上がる場所に母乳を置きません。
  • あらかじめ冷蔵解凍をかけておくと、急いでぬるま湯で溶かすうちに温度があいまいになる場面を減らせます。

解凍・温めの方法を一目で整理

下の表は、状況ごとにどの方法を使い、何を避けるかの感覚をつかむための整理です。正確な保存「時間」の目安は保存の目安の記事の表を参考にし、この表は方法を中心にご覧ください。

状況おすすめの方法避けること
凍った母乳を溶かす(余裕があるとき)前夜に冷蔵室へ移してゆっくり解凍常温に長く放置
凍った母乳を溶かす(急ぐとき)ぬるま湯・流水に浸して解凍電子レンジ、熱いお湯
温める温かいお湯で湯せん、体温(37℃前後)まで電子レンジ、煮立ったお湯
混ぜるやさしく回して混ぜ、手首で温度を確認強く振る
残った母乳口をつけたものは廃棄再冷凍、次の授乳に使い回す

こんなときは母乳の専門家・小児科へ

解凍と温めはたいてい上の順番どおりで大丈夫ですが、次のように判断が難しい状況なら、一人で決めるより母乳育児の専門家や小児科に確認するほうが安心です。

  • 母乳からすっぱい、または変なにおい・味がして、飲ませてよいか判断がつかない
  • 赤ちゃんが温めた母乳を飲んだあと、いつもと違って何度も吐く、下痢、発疹のような反応を見せる
  • 搾乳・保存・解凍の流れ全体がうちの子に合っているか個別の相談を受けたい
  • 早産児だったり特別な健康状態があったりして、より厳しい基準が必要なことがある

特に赤ちゃんが飲んだあとに繰り返し吐いたり、ぐったりして元気がなく見えたりするときは、原因を一人で推測するより早めに受診するほうがよいです。

記録しておくと次の授乳がぐっと楽に

搾乳と解凍を繰り返していると、「このパックいつ凍らせたっけ」「今日は何回目の授乳だっけ」と記憶が混ざりやすくなります。凍らせた日付や飲ませた時間をそのつど残しておくと、古いものから先に使え、再冷凍のような失敗も減らせます。

こんなときすくすくぱしゃに授乳や搾乳の記録を残しておくと、飲ませた時間と量を写真と一緒に少しずつためられます。冷凍しておいた母乳を順番に使うのにもよく、小児科で相談するときに「いつどう飲ませたか」をそのまま見せられるので、会話もしやすくなります。

よくある質問

冷蔵で解凍した母乳はいつまで使えますか。

冷蔵で解凍した母乳は、決めた時間内に使うことをおすすめします。常温に出しておいた時間が長いほど、使える時間は短くなります。冷蔵・冷凍・常温ごとの具体的な時間の目安は、先に紹介した保存の目安の記事の表にまとめてあります。

解凍しただけでまだ温めていない母乳も、また凍らせてはいけませんか。

温めたかどうかに関わらず、一度溶かした母乳は再冷凍しないのが公的な基準です。最初に凍らせるとき1回分ずつ小分けにしておくと、捨てる量を減らせます。

母乳から石けんのようなにおいがします。傷んだのでしょうか。

母乳によっては保存後に独特のにおいがすることがあり、これと傷んだにおいは見分けがあいまいなことがあります。においや味がおかしいと感じて飲ませるのをためらうなら、もったいなくても廃棄し、繰り返すようなら母乳育児の専門家に相談してみてください。

温めすぎて熱くなってしまいました。冷ましてから飲ませてよいですか。

熱く温まったら、冷水ではなく常温やぬるい状態で自然に冷ましたあと、手首で温度を確認して飲ませれば大丈夫です。ただし、すでに熱くなりすぎた場合は成分に負担がかかっていることがあるので、次からは湯せんで温度を低めに見てください。

最後に整理すると

凍った母乳は冷蔵でゆっくり溶かすのを優先し、急ぐときはぬるま湯や流水に浸して溶かします。温めるときは温かいお湯で湯せんして体温くらいまでだけ、そして電子レンジと熱いお湯は避けることを覚えておいてください。脂肪が浮いて層が分かれるのは自然なことなのでやさしく混ぜればよく、一度溶かした母乳は再冷凍せず、口をつけた残りの母乳は廃棄します。

何より、においや味がおかしい母乳は、もったいなくても飲ませないこと、そして判断が難しかったり赤ちゃんが異常な反応を見せたりしたら、母乳育児の専門家・小児科に相談すること。この二つを心にとめておけば、搾乳した母乳をずっと安心して飲ませられます。