授乳中に食あたり・胃腸炎になったら、授乳を続けながら対処する方法

授乳中に食中毒・胃腸炎で体調をくずすと、授乳をやめるべきか心配になりますよね。多くの場合続けても差し支えない理由から、脱水を防ぐ水分・経口補水液、手洗いの衛生、薬の注意、そして早めに受診したほうがよいサインまで段階ごとに整理しました。

夏場に傷んだ食べ物やお刺身などでお腹をこわすと、自分がつらいこと以上に「この状態で授乳しても大丈夫かな」という心配が先に来ますよね。下痢に嘔吐まで重なると、菌が母乳に移るのではと、授乳をやめたり搾って捨てたりすべきかと手が止まってしまいます。

まず大きな流れから見てみましょう。よくある食中毒やウイルス性の胃腸炎は、多くの場合、時間とともに自然に回復していくもので、こうしたときは授乳を続けても差し支えないことが多いです。そしてケアの中心は「下痢を早く止めること」ではなく、「脱水を防ぐこと」です。この二つを覚えておくだけでも、目の前の焦る気持ちは少し落ち着くはずです。

この記事では、なぜ授乳を続けても差し支えないことが多いのか、体調をくずしたときに何をどんな順番でケアすればよいか、そして反対にひとりで我慢せず、早めに受診したほうがよいサインは何かまで、段階ごとに整理しました。

授乳中に胃腸炎になりました。授乳をやめるべき?

結論からお伝えすると、よくある食中毒・胃腸炎であれば多くの場合、授乳をやめずに続けても差し支えないことが多いです。食中毒や胃腸炎を起こす菌・ウイルスは、多くはお母さんの腸の中にとどまっていることが多く、母乳を通じて赤ちゃんへそのまま移ることは少ない傾向にあります。

むしろ助けになる面もあります。お母さんの体がその菌と闘ってつくり出した抗体が母乳に含まれて赤ちゃんへ届き、同じ病気から赤ちゃんを守る役割をすることがあります。ですから、体調が悪いときに授乳をやめることが、赤ちゃんにとって必ずしもより良い選択とは限らないのです。

もちろん、赤ちゃんに菌が移る経路がまったくないわけではありません。ただ、その通り道は母乳というより手や接触であることが多いです。トイレのあとの手、赤ちゃんに触れる手を通じて移るため、あとでお話しする手洗いの衛生が、授乳をやめること以上に大切です。

なぜ脱水を防ぐことが先なの?

下痢や嘔吐がつらいのは、体の中の水分と電解質が急速に失われるからです。ですから対処の第一は「下痢を止める薬」ではなく、失われた分だけ水分を補うことです。下痢そのものは体が悪いものを外に出そうとする過程なので、無理に止めるより、脱水を防ぎながら過ぎるのを待つのが基本です。

授乳中の方には理由がもう一つあります。お母さんの体の水分が足りなくなると、母乳の量も一緒に減ることがあります。ですから水分をこまめに補うことは、自分の回復のためだけでなく、授乳を続けていくためにも大切です。体調が悪いときこそ、いつもより多めにこまめに飲むと考えるとよいでしょう。

このとき水だけでは失われた電解質まで補いにくいことがあるため、経口補水液(ORS)を併せて使うと役立ちます。薬局で売っている経口補水液を、少しずつこまめに分けて飲む方法です。一度にたくさん飲むと戻してしまうことがあるので、ひと口ふた口ずつこまめに、がコツです。

体調をくずしたときに順番にケアすること: ①水分・経口補水液を少しずつこまめに ②手洗い・衛生 ③薬は成分を確認して相談 ④休息・食事、そして早めに受診したほうがよいサイン(お母さん: 高熱・血便・ひどい脱水・48時間以上続く / 赤ちゃん: 発熱・ぐったり・尿の激減)をまとめた図

体調をくずしたときの対処、順番に整理すると

今すぐ何から始めればよいか迷うときは、順番を決めておくと気持ちが少し落ち着きます。下の表のように水分補給 → 衛生 → 薬の判断 → 休息の順に一つずつ確認してみてください。それぞれの段階がなぜ必要か、何に気をつけるとよいかも一緒にまとめました。

段階何をなぜ・気をつける点
1. 水分・経口補水液水と経口補水液(ORS)を少しずつこまめに脱水予防が最優先。一度にたくさんより、ひと口ふた口ずつこまめに
2. 手洗い・衛生トイレのあと・赤ちゃんに触れる前に石けんで手洗い菌は母乳ではなく手・接触で移ることが多い
3. 薬服用前に成分を確認し、薬剤師・医師に相談下痢止め・抗生物質の自己判断での服用に注意。授乳中であることを必ず伝える
4. 休息・食事無理せず休み、受けつければ消化のよいものから回復と母乳量の維持に役立つ。無理に食べないでいる必要はない

1. 水分と経口補水液を少しずつこまめに

いちばん最初で、いちばん大切な段階です。先ほどお伝えしたとおり脱水を防ぐことが中心なので、水と経口補水液を少しずつこまめに分けて飲んでください。嘔吐がひどいときは、ひと口ふた口ずつでもこまめに飲み込むほうが、一度にたくさん飲んで戻してしまうより楽です。尿の色が濃くなったり量が目に見えて減ったりしたら、水分が足りないサインのことがあるので、もう少し意識して補ってください。

2. 手洗いで移る道をふさぐ

赤ちゃんを守るには、授乳をやめること以上にこの段階が力を発揮します。菌はたいてい手と接触を通じて移るため、トイレのあと、赤ちゃんに触れたり授乳したりする前に石けんでていねいに手を洗うことだけで、移るリスクを大きく減らせます。タオルや食器を分けて使うことも役立ちます。

3. 薬は成分を確認して相談してから

この部分は特に慎重に進めるのがよいでしょう。授乳中にも使える薬がある一方で、注意が必要な成分もあるため、どんな薬でも成分を確認し、薬剤師や医師に相談したうえで服用することをおすすめします。特に下痢を止める下痢止めは、体が悪いものを出すのをかえって妨げることがあるため、自己判断で飲むより相談するほうが安心です。相談するときは授乳中であることを必ず伝えてください。そうすれば、それに合った薬を案内してもらえます。

4. しっかり休み、受けつければ食べる

体が回復する力を出すには、休むこともケアの一部です。できれば助けを借りて少しでも横になり、少しお腹が落ち着いたら、おかゆやくず湯のような消化のよいものから少しずつ召し上がってみてください。無理に食べないでいる必要はありません。よく食べてよく休むことが、母乳量を戻すことにも役立ちます。

母乳を搾って捨てるべき? よくある思い込みの整理

体調をくずしたときに保護者が最も多く抱く心配のいくつかは、実は多くの場合しなくてよいことです。一つずつ見ていきましょう。

  • 「授乳をやめなければ」 — よくある食中毒・胃腸炎なら、多くの場合続けても差し支えないことが多いです。菌はお母さんの腸にとどまり、抗体は母乳を通じて、むしろ赤ちゃんを助けます。
  • 「搾って捨てなければ」 — 多くの場合は不要です。母乳を通じて菌が移ることは少ないため、問題のない母乳を捨てる理由は大きくありません。
  • 「まず下痢止めを飲まなければ」 — 脱水を防ぐことが先です。下痢止めは自己判断での服用に注意し、相談してから。
  • 「薬はすべて危険」 — 成分ごとに異なります。すべて避けるより、確認して相談し、使える薬を見つけるほうがよいです。

まとめると、体調が悪いときに必要なのは「授乳をやめること」ではなく、「授乳を続けながら水分と衛生を整えること」です。心配のあまり急いで授乳をやめてしまい、母乳量が減って増やし直すのに苦労することもあるので、あわてて決める前にもう一度考えてみるとよいでしょう。

こんなサインが見えたら、早めに受診してください

ほとんどの食中毒・胃腸炎は時間とともによくなっていきますが、下のサインが見えたらひとりで我慢せず、早めに受診してください。お母さん自身と赤ちゃん、両方を一緒に見てあげてください。

お母さんにこんなサインがあれば赤ちゃんにこんなサインがあれば
高熱が出る熱が出る、またはいつもと違ってぐったりする
便に血が混じる(血便)あまり飲まず、繰り返し吐く
めまいがあり、尿が大きく減るほどのひどい脱水が疑われる尿(おむつ)の量が目に見えて減り、脱水が疑われる
下痢・嘔吐が48時間以上続く下痢・嘔吐が続き、反応が弱い

特に高熱、血便、ひどい脱水は、単なるお腹の不調を超えたサインのことがあります。そしてお母さんが体調をくずしている間に赤ちゃんまで熱が出たり、ぐったりしたり、尿が急に減ったりしたら、赤ちゃんも一緒に受診してみるのが安心です。「いつもと明らかに違う」と感じたら、先延ばしにせず確認してもらうことが、気持ちの安心にもタイミングを逃さないことにもつながります。

よくある質問

スポーツドリンクを飲んでもいい?
のどの渇きをやわらげるには役立ちますが、市販のスポーツドリンクは糖分が多く、電解質のバランスが治療用とは異なるため、ひどい下痢・嘔吐の脱水を補うには足りないことがあります。脱水が心配なほどであれば、薬局の経口補水液(ORS)を使うほうが向いています。

薬を飲んだ状態で授乳してもいい?
薬ごとに異なります。ですから服用前に薬剤師や医師に授乳中であると伝え、それに合った薬と飲み方を案内してもらうのがいちばん安心です。自己判断より、相談を経ることをおすすめします。

赤ちゃんに移らないか怖いです。どうすればいい?
いちばん確実な予防は、授乳をやめることではなく手洗いです。トイレのあとと赤ちゃんに触れる前に石けんでていねいに洗い、タオル・食器を分けて使えば、移るリスクを大きく減らせます。

食事はどうすればいい?
無理に食べないでいる必要はありません。お腹が落ち着いたら、おかゆやくず湯のような消化のよいものから少しずつ始めてみてください。よく食べて水分を補うことが、回復と母乳量の維持に役立ちます。

最後に整理すると

授乳中に食中毒や胃腸炎で体調をくずしても、よくある場合なら、多くは授乳をやめずに続けても差し支えないことが多いです。菌はお母さんの腸にとどまり、抗体は母乳を通じて届くからです。中心は下痢を止めることではなく脱水を防ぐことなので、水と経口補水液を少しずつこまめに補い、手洗いで衛生を守り、薬は成分を確認して相談したうえで使い、しっかり休む順番でケアすれば大丈夫です。

母乳を搾って捨てたり、急いでやめたりすることは、多くの場合必要ありません。ただし、お母さんに高熱・血便・ひどい脱水があったり48時間以上続いたりするとき、また赤ちゃんが熱を出したりぐったりしたり尿が急に減ったりするときは、早めに受診してください。体調が悪いなか赤ちゃんまで見てあげようと頑張っていらっしゃると思いますが、よく食べてよく休みながら一つずつ確認していけば、多くは無理なく過ぎていくはずです。