歯ぐずりについての誤解、高熱や下痢も歯ぐずりのせい?
歯が生えるとき、高熱・下痢・嘔吐まで歯ぐずりのせいにしがちですが、歯ぐずりが起こす症状は思ったより限られています。琥珀のネックレス・ベンゾカインジェル・ホメオパシー錠剤といった民間療法の危険、鎮痛薬の誤解、安全な対処と受診のタイミングまで公式の基準で整理しました。
赤ちゃんがいつになくぐずり、よだれを流して歯ぐきが腫れて見えると、「あ、歯が生えてくるのかな」と思いますよね。そのうち熱が出て下痢までしてくると、これも全部歯ぐずりのせいだと片づけてしまいがちです。ところが、ここで誤解がよく生まれます。
まず大きな方向からお伝えします。歯ぐずりが赤ちゃんを不快にさせるのは確かですが、高熱や下痢・嘔吐のような目立つ全身症状までは起こさないと考えられています。歯が生えるときに出るのは、よだれが増える、何かをかみたがる、歯ぐきが腫れる、少しぐずる程度です。それ以上に赤ちゃんがつらそうなら、歯ぐずりではなく別の原因、とくに感染症を疑ってみる必要があるかもしれません。
以下では、歯ぐずりをめぐるよくある誤解をひとつずつ見ていき、危険なことがある民間療法や鎮痛薬についての誤解、そして家で安全にできる対処と受診が必要なタイミングまで整理します。
歯ぐずりが実際に起こす症状はどこまで?
歯ぐずりで見られる症状は、たいてい軽めです。よだれがいつもより増え、手でもおもちゃでも口に持っていってかみたがり、歯ぐきが赤く腫れたり硬くなったりし、その不快感で少しぐずる程度です。微熱、つまり38℃未満の少し上がった体温を伴うこともあります。
ここで大切なのは、歯ぐずりは「軽い不快感」の範囲をあまり超えないという点です。米国小児科学会も、歯ぐずりが高熱や下痢、嘔吐、全身の発疹のような症状を起こすという根拠ははっきりしないとしています。ですから、赤ちゃんがこれを超える症状を見せたら、たまたま歯が生える時期と重なっただけで、別の原因が一緒にあるのではないかを見てあげるとよいでしょう。
歯が生える時期と感染症が起きやすい時期が重なることも、誤解が積み重なる理由です。赤ちゃんはだいたい生後6か月ごろから歯が生え始めますが、この時期はお母さんからもらった免疫が減り、いろいろな感染症によく触れる時期でもあるのです。だから「歯が生えるときに熱が出た」という経験が、「歯ぐずりが熱を出した」につながりやすいのです。
| 歯ぐずりで見られる症状 | 歯ぐずりとは考えにくい症状 |
|---|---|
| よだれが増える | 38℃以上の高熱 |
| 何かをかみたがる | 下痢・嘔吐を繰り返す |
| 歯ぐきが腫れる・硬くなる | 全身に広がる発疹 |
| 38℃未満の微熱 | ぐったりして飲まない |
| いつもより少しぐずる | 激しく続く泣き |
誤解その1、高熱と下痢・嘔吐も歯ぐずりのせい
いちばんよくある誤解です。歯が生えるから熱が出てお腹をこわした、と思いがちですが、38℃以上の高熱や繰り返す下痢・嘔吐は歯ぐずりの症状とは考えません。こうした症状があれば、かぜ、胃腸炎、中耳炎のような感染症が一緒にある可能性をまず見てあげてください。
とくに「歯ぐずりのせいだろう」と片づけているうちに、本当に必要な受診のタイミングを逃してしまうのが、いちばん心配な点です。熱が38℃を超えたり、下痢・嘔吐を繰り返したり、赤ちゃんがぐったりしてうまく飲めないなら、歯ぐずりのせいにせず小児科で原因を確認するほうが安心です。歯ぐずりか感染症かを症状でどう見分けるかは、歯ぐずりとかぜ・感染症を見分ける方法でくわしく取り上げています。
誤解その2、ひどくぐずって夜通し泣くのも全部歯ぐずり
歯ぐずりによる不快感はたいてい軽く、赤ちゃんが耐えきれないほど激しく泣いたり、夜通し眠れなかったりするほどになることは多くないと考えられています。ですから、いつもと違って強く長く続くぐずりや泣きは、歯ぐずりだけでは説明しにくいことがあります。
あやしてもなかなか落ち着かない、いつもより目立ってぐったりする、泣き方がいつもと明らかに違うなら、歯ぐずりと決めつけず、ほかの不快感がないか見てあげてください。歯ぐずりという説明は楽ですが、その楽さのせいで赤ちゃんが送るほかのサインを見逃さないことが大切です。
誤解その3、琥珀のネックレスや歯ぐずりジェル・錠剤が役立つ
歯ぐずりがつらそうに見えると、何かしてあげたい気持ちからいろいろな製品を探したくなりますよね。ところが、よく使われる民間療法の一部は、役立つどころか安全上の問題があり、公的機関が使わないよう警告しているものがあります。3つだけ挙げます。
1. 琥珀のネックレスは窒息・首絞めの危険があります
琥珀のネックレスをつけると歯ぐずりが治るという話がありますが、その効果ははっきりした根拠がありません。むしろ米国小児科学会は、赤ちゃんの首に何かをかけること自体が危険だと警告しています。寝ているときや遊んでいるときに首に絡まって首が絞まることがあり、玉が切れると赤ちゃんが飲み込んで窒息する危険もあるからです。ですから歯ぐずりの目的であってもなくても、赤ちゃんの首や手首にネックレス類をつけることはおすすめしません。
2. ベンゾカイン入りの歯ぐずりジェルは乳幼児には禁忌です
歯ぐきに塗って麻酔する歯ぐずりジェルの中には、ベンゾカイン成分が入った製品があります。米国FDAは、ベンゾカイン入りの歯ぐき用製品を2歳未満の乳幼児に使わないよう警告しました。まれですが、血液が酸素をうまく運べなくなるメトヘモグロビン血症という深刻な状態につながることがあるためです。歯ぐきに塗る麻酔成分の製品は自己判断で使わず、成分と使える年齢を小児科や薬剤師に先に確認してください。
3. ホメオパシーの歯ぐずり錠剤にも安全性の警告がありました
飲ませるホメオパシーの歯ぐずり錠剤も役立つと思いがちですが、米国FDAは一部のホメオパシー歯ぐずり製品で成分量が一定でない問題などを理由に、安全性の警告を出した例があります。効果が確かめられているとは言いにくく、安全が確認されていない製品ですから、使う前に成分と認可の有無を確認し、小児科と相談してください。
歯ぐずり製品は「みんな使っている」という理由だけでは安心できません。塗る・飲ませる製品も、首にかける製品も、赤ちゃんに使う前に小児科や薬剤師に成分と安全性を確認する習慣が、赤ちゃんを守ってくれます。
誤解その4、鎮痛薬はとにかく我慢か、逆にたっぷり与えてよい
鎮痛薬をめぐっては、正反対の2つの誤解が同時にあります。ひとつは「薬はなるべく我慢したほうがよい」、もうひとつは「つらそうだからたっぷり与えても大丈夫」です。どちらも気をつけたい点があります。
赤ちゃんがとてもつらそうなときは、年齢に合った鎮痛・解熱剤を使うことができます。ただしどの薬を、どのくらい、いつ与えるかは、赤ちゃんの月齢や体重によって変わるため、必ず小児科や薬剤師の案内に従ってください。自己判断で量を増やしたり、大人用の薬を分けて与えたり、複数の薬を重ねて与えたりするのは危険です。逆に、赤ちゃんが明らかにつらそうなのにとにかく我慢させるのも答えではありません。判断がつかないときは、小児科や薬剤師にたずねるのがいちばん安心です。
では、何をしてあげられる?
効果が確認されていない製品の代わりに、根拠のある安全な方法でも赤ちゃんの不快感を十分に和らげられます。次の方法がそうです。
1. 冷やした歯固めを与える
冷蔵庫に少し入れて冷やした歯固めは、腫れた歯ぐきを落ち着かせるのに役立ちます。ただし凍らせて硬くなった歯固めは歯ぐきを傷つけることがあるので冷凍は避け、赤ちゃんが飲み込むような小さな部品がないか、つなぎ目が丈夫かを確認してください。
2. 清潔な手や濡れたガーゼで歯ぐきマッサージ
手をきれいに洗ってから、指や水に濡らした清潔なガーゼで赤ちゃんの歯ぐきをやさしく押してマッサージすると、不快感を和らげられます。赤ちゃんが意外と心地よさそうにする方法です。
3. よだれかぶれは拭いて保湿を
歯ぐずりの時期はよだれが増えて、口まわりやあご、首によだれかぶれができやすくなります。流れたよだれは柔らかい布でこまめに拭き、肌がただれないように保湿してあげると役立ちます。
離乳食を始めた赤ちゃんなら、冷やしたやわらかい食べ物が役立つこともありますが、このときも赤ちゃんが飲み込んでのどに詰まらせる危険のない形かを必ず見てあげてください。
こんなときは歯ぐずりで片づけず受診を
歯ぐずりだと思っても、次のサインが見えたら別の原因かもしれないので、小児科で確認してもらってください。
- 38℃以上の熱が出る
- 下痢や嘔吐を繰り返す
- ぐったりしてうまく飲まない、脱水のサインが見える
- あやしても落ち着かないほどひどくぐずる・泣く
とくに生後3か月未満の赤ちゃんが発熱したら、ためらわずすぐに受診してください。この時期の発熱は、原因の確認が早いほどよいものです。「歯が生えるからだろう」と先延ばしにするより、上のサインがあるときは受診で確認するほうが、気持ちも落ち着き、赤ちゃんにとっても安心です。
よくある質問
歯が生えるときに熱が出る赤ちゃんもいますが、全部感染症ですか?
歯ぐずりの時期に38℃未満の微熱が少し伴うことはあります。ただ、38℃以上の高熱は歯ぐずりとは考えにくいものです。熱が高かったり長引いたりするなら、歯ぐずりで片づけず受診で原因を確認してください。
歯が生えていて、ごはんをあまり食べません。大丈夫でしょうか?
歯ぐきが不快でいつもより食べないことはあります。でも、目立って食べない、脱水のサインが見える、ぐったりする様子が一緒にあれば、別の原因かもしれないので小児科と相談するとよいでしょう。
歯ぐずりジェルはまったく使ってはいけませんか?
成分によって変わります。ベンゾカインのような麻酔成分が入った製品は2歳未満にはおすすめしません。どの製品を使ってよいか、赤ちゃんに安全かは、使う前に小児科や薬剤師に確認してください。
歯はふつういつから生えますか?
だいたい生後6か月ごろから生え始めますが、赤ちゃんによって差が大きく、もっと早いことも遅いこともよくあります。時期が少し違うからといって問題とは考えにくいものです。
最後に整理すると
歯ぐずりが赤ちゃんを不快にさせるのは確かですが、その症状はよだれの増加・歯ぐきの腫れ・微熱・軽いぐずり程度で、思ったより限られています。38℃以上の高熱や下痢・嘔吐、激しい泣きまで歯ぐずりで片づけていると、本当に必要な受診のタイミングを逃すことがあります。
琥珀のネックレスは窒息・首絞めの危険が、ベンゾカイン入りのジェルは乳幼児禁忌という警告が、ホメオパシー錠剤は安全性の警告があった以上、こうした民間療法はおすすめしにくいものです。鎮痛薬は年齢に合わせて、量とタイミングは必ず小児科や薬剤師の案内に従ってください。代わりに、冷やした歯固め、濡れたガーゼでの歯ぐきマッサージ、よだれかぶれの保湿のような安全な方法で、赤ちゃんの不快感を和らげられます。
そして、38℃以上の熱、繰り返す下痢・嘔吐、ぐったりのようなサインがあるとき、とくに生後3か月未満の赤ちゃんが発熱したときは、歯ぐずりで片づけずすぐに受診してください。この点だけ覚えておくと安心です。