夏のベビーカーに布をかけないで|日よけのつもりが「魔法びん」になる理由

夏に日ざしや蚊をふせごうとベビーカーに薄い布やガーゼをかけると、風通しがふさがれて中が魔法びんのように熱くなることがあります。スウェーデンの小児科専門医の実験報道をもとに、なぜ危険なのか、赤ちゃんの暑さの危険サインは何かを整理しました。

真夏の日中に赤ちゃんをベビーカーに乗せて出かけると、強い日ざしや寄ってくる蚊が気になりますよね。そこで多くの親御さんが、薄いガーゼやハンカチ、薄手のブランケットを一枚、ベビーカーの上にそっとかけてあげます。「これくらいなら日ざしもよけられて、風も通るだろう」という気持ちで。よかれと思ってのことですが、まさにこの習慣が、赤ちゃんに思わぬ危険になることがあります。

まず大事なところから。薄い布一枚でもベビーカーをおおうと空気が通らなくなり、内側の温度が魔法びんのように急に上がることがあります。見た目は涼しそうでも、赤ちゃんがいるベビーカーの中は外よりずっと暑くなるのです。ですから夏場は、風通しをふさぐカバーはかけないほうが安全です。

では日ざしはどうよけるのか。それは風の通る方法で別に用意すればよく、くわしいやり方は下の姉妹記事にまとめてあります。この記事では「なぜおおってはいけないのか」と「赤ちゃんが暑いときに見のがしてはいけないサイン」に絞ってお話しします。

夏の屋外で、布をかけず基本の日よけだけを広げたベビーカーに乗る赤ちゃん

薄い布一枚が、どうしてそんなに危険なのですか?

いちばん気になる点からお答えします。薄い布は日ざしを少しよけてくれるかもしれませんが、同時に空気の出入りする道をふさいでしまいます。すると、ベビーカーの中に閉じこめられた空気が温まり、熱が逃げられずにたまり続けます。赤ちゃんの体から出る熱まで加わるので、内側は外よりずっと暑くなるのです。

これを実際に示した例があります。スウェーデン・ストックホルムのある小児病院の小児科専門医(Svante Norgren)がこの問題を警告し、現地の報道機関が実際に実験をしてみました。ある夏の日、薄い布をかけていないとき約22℃だったベビーカーの中が、薄い布をかけると30分で約34℃、1時間後には約38℃まで上がりました。この専門医は「中が魔法びんのように極端に熱くなる」と述べ、空気の循環が悪くなるうえ、カバーのせいで赤ちゃんの様子を目で確かめることもむずかしくなると指摘しました。

ベビーカーの状態ベビーカー内側の温度(実験報道による)
薄い布をかける前約22℃
薄い布をかけて30分約34℃
薄い布をかけて1時間約38℃

数字を見るだけでも差が感じられますよね。もちろんこの値は、ある特定の日、特定の条件で出た結果なので、いつも同じように再現されるわけではありません。でも方向ははっきりしています。風通しをふさぐカバーは、ベビーカーの中を冷やすのではなく、むしろ熱を閉じこめるということです。「薄いから大丈夫だろう」が通じない理由がここにあります。

薄い布をかけたベビーカーの中の温度が、22度から34度、38度へ上がっていく過程を温度計で示した図

ベビーカーは、大人が立っている場所より暑いのです

もう一つ知っておくとよいことがあります。ベビーカーは地面に近い、低い高さにあります。夏場のアスファルトや歩道のブロックは日ざしで熱せられ、熱い熱を上に放ちますが、ベビーカーに乗った赤ちゃんは、大人の顔の高さよりその放射熱を近くで受けます。大人が涼しいと感じる日陰でも、下のほうのベビーカーの中は思ったより暑いことがある、ということです。ここに風通しまでふさぐカバーが加わると、熱が重なって上がります。

さらに赤ちゃんは、大人より暑さにずっと弱いです。まだ体温を自分で調節する力が未熟で、汗で熱を出す力も大人ほどではありません。何より「暑いよ」と言えないので、そばにいる大人が代わりに見てあげる必要があります。とくに月齢の低い赤ちゃんほど、暑さで状態が早く悪くなることがあるので、生後6か月未満の赤ちゃんは真夏の直射日光を避けるのが共通した推奨です。

赤ちゃんが暑いとき、こんなサインを見のがさないで

ここがこの記事でいちばん大切なところです。ベビーカーの中が暑くなると、赤ちゃんの体がまずサインを送ります。下のサインが見えたらすぐに暑さをさましてあげて、この項目だけは別に覚えておいてください。

  • 顔がいつになく赤くなる、または反対に青白くなるとき
  • 体が熱くほてって、ぐったりするとき
  • いつもと違ってひどくぐずる、または反対に反応がにぶくなるとき
  • よく飲まない、または吐くとき
  • 汗をたくさんかいていたのに、急に汗が出なくなるとき
赤ちゃんの暑さの危険サイン五つと対処法をチェック形式でまとめた図

こうしたサインが見えたら、すぐに日陰や涼しい室内に移り、服をゆるめて体をさましてあげてください。水分をとれる赤ちゃんなら少しずつ飲ませてあげます。それでも赤ちゃんがぐったりする、反応がおかしい、熱がなかなか下がらないときは、ためらわず救急の受診をしてみてください。赤ちゃんは大人より暑さで状態が早く悪くなることがあるので、大丈夫になるのを待つより、早めに助けを求めるほうがよいです。

とくに生後3か月未満の小さな赤ちゃんは、発熱だけでも早めに受診してみるのがよいです。小さな赤ちゃんは、ほかの症状を待っているあいだに状態が急に変わることがあるからです。

では夏は、日ざしをどうよけるのですか?

ここまで読んで「じゃあ炎天下にそのまま置いておけというの?」と思われるかもしれません。もちろん違います。直射日光は避けるべきですが、答えは風通しをふさぐカバーではなく、空気の通る方法でよけることです。ベビーカーに標準でついている日よけ(サンキャノピー)を活用したり、風の通る方法で日陰をつくってあげたりする、といった具合です。

この部分は別にくわしく扱うほど方法がいくつもあるので、ここで短くまとめるより姉妹記事に整理してあります。どうすれば風通しをふさがずに日ざしをよけられるかは、夏のベビーカー、風通しをふさがず日ざしをよける方法でご確認ください。夏場のベビーカーでのお出かけ全般を見直したいなら、夏のベビーカー安全チェックリストもあわせて見るとよいですよ。

夏の日に木陰で、風の通るベビーカーにゆったり座って外を眺める赤ちゃん

よくある質問

Q. 薄いガーゼや蚊帳くらいなら大丈夫ではないですか?
薄い素材でも、ベビーカーをおおって空気の流れをふさぐと内側の温度が上がることがあります。さきほど見た実験も、厚いブランケットではなく「薄い布」をかけた結果でした。薄いから安心と思うより、風通しをふさがない方法で蚊をふせぐほうが安全です。蚊・日ざし対策は上でリンクした姉妹記事にまとめてあります。

Q. くもりの日や日陰なら、かけてもいいですか?
日ざしが弱い日でも、カバーが空気の循環をふさぐしくみは同じです。とくに気温そのものが高い夏場は、日陰にいてもベビーカーの中が暑くなることがあるので、風通しをふさぐカバーは季節を通しておすすめしません。かわりに、赤ちゃんの様子とベビーカー内側の温度をこまめに見てあげてください。

Q. ほんの数分くらいでも、だめなのですか?
短い時間でも、真夏の炎天下では温度が思ったより早く上がることがあります。実験でも30分で目に見えて温度が上がりました。「ちょっとだけ」とかけておくより、短いお出かけでも風の通る状態を保ってあげるのがよいです。

Q. ベビーカーの中が暑いか、どう確かめますか?
赤ちゃんの首のうしろや背中に手をあててみて、じっとり汗ばんでいたり、いつになく熱いなら暑さのサインのことがあります。カバーをめくってこまめに赤ちゃんの顔や様子を直接確かめる習慣をつけると、上で挙げた危険サインにも早く気づけます。

最後にまとめると

夏にベビーカーへ薄い布をかけるのは、日ざしをよけようとするよかれと思ってのことですが、風通しがふさがれて内側が魔法びんのように熱くなることがあります。実際の実験でも、薄い布をかける前は約22℃だったベビーカーの中が、布をかけると30分で約34℃、1時間後には約38℃まで上がりました。ベビーカーは地面の放射熱をより受ける低い場所にあり、赤ちゃんは暑さに弱いので、風通しをふさぐカバーはかけないほうが安全です。赤ちゃんの顔が赤くなる、または青白くなる、体が熱くぐったりする、飲まない、吐くといったときはすぐに涼しい場所に移してさまし、おかしいと感じたら救急の受診を、とくに生後3か月未満なら発熱だけでも早めに受診してみてください。日ざしをよける方法は、風通しをふさがないやり方で、姉妹記事を参考に用意してあげてください。

夏のベビーカー、風通しをふさがず日ざしをよける方法