赤ちゃんの体温を正確に測る方法 — 部位別のコツと誤差の読み方
赤ちゃんの体温が測るたびに違う理由から、部位別の測り方と正確さ、部位間の差の読み方、体温計の種類ごとの特徴まで整理しました。同じ方法で続けて、どの部位で測ったかを一緒に記録するのがかなめです。
夜中に赤ちゃんが熱っぽい気がして体温を測ったら、一度は37.2度、もう一度測ると38度が出て、どきっとしますよね。どの値を信じればいいのか迷います。値が少しずつ違って出るのは、たいてい測る部位や方法、機器が違うために起こることです。体温計が壊れていたり、赤ちゃんに大きな問題が起きたりしているというより、です。
ですから赤ちゃんの体温で大切なのは「一度の完璧な数字」ではなく、同じ部位を同じ方法で続けて測り、流れを見ることです。この記事では、部位別にどう測るか、部位ごとにどれくらい差が出るか、その差をどう読めばよいか、そして体温計の種類はどう違うかを、ひとつずつ見ていきます。

なぜ測るたびに体温が違うのでしょうか
同じ赤ちゃんを数分のあいだに測ったのに値が違って出るのは、よくあることです。体温はもともと一日のなかでも少しずつ上下し、測る部位や方法によって違って捉えられます。
ここには三つのことが重なります。まず部位ごとに基準が違います。体の内側(深部)の温度に近い部位ほど高く、皮膚の表面に近い部位ほど低く出る傾向があります。測った直後の状態も影響します。泣いたあとや母乳・ミルクを飲んだ直後、厚くくるんでいたあとは、一時的に高く出ることがあります。最後に測るコツです。耳の体温計の角度が少しずれても、わきの下がしっかり密着していなくても、値は変わります。
ですから、ひとつの値が跳ねたからとすぐ驚くより、赤ちゃんが落ち着いた状態で同じ方法でもう一度測ってみるのがよいでしょう。
部位別にどう測り、どれくらい正確でしょうか
家庭で赤ちゃんの体温を測る部位は、たいてい直腸、耳(鼓膜)、おでこ、わきの下の四か所です。正確さと手軽さがそれぞれ違うので、状況と赤ちゃんの月齢に合わせて選べば大丈夫です。おおむね体の内側の温度に近い部位ほど正確さは高いですが、測るのが手間です。逆に皮膚の表面のほうを測ると楽な代わりに、まわりの環境に揺れやすくなります。
1. 直腸の体温 — 正確さがいちばん高い
直腸の体温は体の内側の温度にいちばん近く、とくに小さな乳児で正確な値が必要なときに信頼度の高い方法です。電子体温計の先に潤滑剤を少しつけ、赤ちゃんを寝かせてから肛門に約2cmほどだけそっと入れ、合図が鳴るまで測ります。無理に深く入れないことが大切です。
ただ、赤ちゃんが不快がり、扱うときに気をつかうので、家庭で毎回使うには負担に感じる方法でもあります。初めてなら、小児科で測るコツを一度確認しておくと安心です。
2. 耳の体温 — 速いが角度がかなめ
耳(鼓膜)の体温計は赤外線で鼓膜の温度を測ります。数秒で終わるので楽ですね。ただし耳の穴が狭い小さな乳児では誤差が大きくなることがあり、おおむね生後6か月以降のほうが安定して使われる傾向があります。
正確さを高めるには、耳を少し後ろの上に引いて耳の通り道を伸ばしてから、センサーが鼓膜に向くように入れます。耳あかが多かったり、赤ちゃんが片側を下にして寝ていた直後は値が揺れることがあるので、両側を測って高いほうの値を参考にすることもあります。
3. おでこの体温 — 起こさずに測りやすい
おでこの体温計(非接触の赤外線方式を含む)は、寝ている赤ちゃんを起こさなくてよいので便利です。ただし汗、風、直射日光、室内外の温度差の影響を大きく受けます。外から入ってきた直後やおでこに汗がにじんでいるときは、実際より低かったり高かったりすることがあります。
手軽なので様子をよく確認するにはよいのですが、「楽」と「いちばん正確」は別の話です。熱が疑われるなら、ほかの部位でもう一度確かめることをおすすめします。
4. わきの下の体温 — 安全で手軽
わきの下(腋窩)の体温は赤ちゃんへの負担が少なく安全なので、新生児の時期にもよく使われます。ただし皮膚の表面を測る方法なので、体の内側の温度より低く捉えられる傾向があります。測るときはわきの下の汗をまず拭きます。そのあとセンサーの先がわきの下の真ん中にくるように挟み、腕を体に密着させて合図が鳴るまで待ちます。
下の表で四つの部位をひと目で見比べてみましょう。
部位 | 正確さ | 手軽さ | 向いている時期 | 測るコツ・注意 |
|---|---|---|---|---|
直腸 | いちばん高い | 低い | 正確な値が必要な小さな乳児 | 約2cmだけ、潤滑剤を使い、無理に入れない |
耳(鼓膜) | 高い | 高い | おおむね6か月以降 | 耳を後ろ上に引いて角度を合わせ、耳あかに注意 |
おでこ | ふつう | いちばん高い | 全年齢のスクリーニング | 汗・風・直射日光・温度差を避ける |
わきの下 | ふつう | 高い | 新生児を含む全年齢 | しっかり密着、表面なので低めに出る |
部位ごとに値が違うとき、どう読めばよいでしょうか
同じ時刻に直腸とわきの下を測ると、値が違って出るのが自然です。体の内側に近い直腸が高く、皮膚の表面のわきの下が低く捉えられる、という具合です。部位のあいだの差はおよそ0.3〜0.5度ほどと見ることが多いですが、赤ちゃんや状況によって少しずつ変わります。
ここでよくある誤解がひとつあります。「わきの下の値に何度か足せば本当の体温」というような固定の式で数字を変えることです。部位ごとの差は人によってばらつきがあるので、勝手に補正した数字はかえって迷いを大きくすることがあります。それより現実的な方法は二つです。
ひとつめは、同じ部位を同じ方法で続けて測り、変化を見ることです。昨日はわきの下で37.3度、今日はわきの下で38.2度なら、部位が同じなので「上がった」という流れをそのまま読めます。ふたつめは、どの部位で測ったかを値と一緒に残すことです。受診のときも「わきの下で38度でした」のように部位を一緒に伝えると、医療者がずっと正確に読み取れます。
部位ごとに熱と見る基準の線そのものが少しずつ違うので、何度からが熱なのかは部位別の発熱の目安表の記事であわせて確認してみるとよいでしょう。体温計は様子を見る道具にすぎず、数字ひとつだけで病気を診断したり安心を決めつけたりするのは難しい、という点も覚えておいてください。
体温計は種類ごとにどう違うでしょうか
体温計は大きく、接触式の電子体温計と赤外線体温計に分けられます。部位別の方法ともつながる話なので、種類ごとの特徴を知っておくと、うちの赤ちゃんに合うものを選びやすくなります。
電子体温計(わきの下・直腸・口内兼用): 先を当てる方式で、わきの下や直腸に使いやすいです。値が安定していて比較的安価です。ただし合図が鳴るまで少し時間がかかります。口内は協力できる大きい子にしかできず、乳幼児にはおすすめしません。
耳(鼓膜)の赤外線体温計: 速くて楽ですが、角度や耳の状態に影響され、小さな乳児では誤差が大きくなることがあります。
おでこ・非接触の赤外線体温計: 赤ちゃんを起こさずに速く測りやすいですが、まわりの環境の影響をいちばん大きく受けます。
どの種類でも、特定の製品が「必ず正確」とは言いにくいものです。赤ちゃんの月齢、主に測る状況(寝ているときか、日中よく確認するか)、扱いやすさをあわせて見て選ぶのが現実的です。新しい体温計を使いはじめるときは、赤ちゃんが元気なときに一度測って平熱を知っておくと、あとで比べる基準ができて役立ちます。
もっと正確に測る小さなコツ
同じ体温計でも、どう測るかによって値は変わります。下の状況を避けるだけでも、誤差をかなり減らせます。
泣いた直後、飲んだ直後、厚くくるんだ直後は一時的に高く出ることがあります。15〜20分ほど落ち着いてから測り直してみてください。
耳の体温は、赤ちゃんが片側を下にして寝ていた直後を避け、耳を後ろ上に引いて角度を合わせます。耳あかが多いと値が揺れることがあります。
おでこの体温は汗を拭き、風・エアコン・直射日光・ヒーターのすぐ前は避けます。外から入ってきたばかりなら、体が室温になじむ時間を少しあげてください。
わきの下の体温は汗を拭き、センサーを真ん中に挟んでから腕を体にしっかり付け、合図が鳴るまで待ちます。
値がはっきりしなかったり跳ねたりしたら、同じ部位でもう一度測って確かめます。
いつ、どれくらいの頻度で測ればよいでしょうか
元気なときに習慣的によく測る必要はありません。ただ、赤ちゃんがいつもと違ってぐったりしたり、熱っぽかったり、機嫌が悪そうなときは体温を確認するとよいでしょう。
熱があるときは一度の数字より、時間に沿った流れのほうが多くを教えてくれます。何時に何度だったか、どの部位で測ったか、解熱剤を使ったならいつ使ったかを一緒に残しておくと、次の判断が楽になります。とくに解熱剤は、使った直後ではなく効果があらわれる時間をおいて測り直さないと、実際の変化が見えません。
こうして部位と値、時間を一緒に書いておくと流れが目に見えます。すくすくぱしゃのような育児記録アプリに体温と時間、測った部位をメモのように残しておくと、夜のあいだに上下した流れや解熱剤のあとの変化を、受診のときにそのまま見せられて役立ちます。熱が出たときに家でどんな順番で対処すればよいかは、熱が出たとき家で対処する順番の記事にまとめています。
こんなときは相談してみてください
体温の測定は赤ちゃんの様子を見る出発点にすぎず、数字だけで大丈夫とか大変とか決めつけるのは難しいものです。次のような場合は、体温の値に関係なく、または値とあわせて早めに受診してみてください。
生後3か月未満の赤ちゃんに熱があるとき: 小さな乳児の発熱は原因を確かめる必要がある場合が多く、できるだけ早く受診するのがよいでしょう。
熱が高かったり長く続いたりして、解熱剤を使ってもなかなか下がらないとき
ぐったりしてうまく飲めず、おしっこの量が目立って減って脱水が疑われるとき
けいれん、呼吸が苦しそう、続く嘔吐、なかなか起きないぐったり、などが見られるとき
予防接種のあとに熱が出る状況は少し毛色が違います。よくある反応のことが多いですが、対処のコツと受診が必要なサインを知っておくと安心です。くわしい内容は予防接種のあとに熱が出たときの対処法の記事で確認してみてください。
よくある質問
新生児はどの部位で測るのがよいでしょうか?
わきの下が安全で手軽なので、新生児の時期によく使われます。ただし正確な値がどうしても必要な状況なら、直腸で測るほうが信頼度は高いです。初めて直腸で測るときは、小児科でコツを一度確認しておくとよいでしょう。
耳の体温計は何か月から使ってよいでしょうか?
耳の穴が狭い小さな乳児では誤差が大きくなることがあり、おおむね生後6か月以降のほうが安定して使われます。それより前は、わきの下などほかの部位とあわせて確認することをおすすめします。
おでこの体温計が楽ですが、信じてよいでしょうか?
速く確認するにはよいです。ただし汗や風、温度差の影響を大きく受けるので、熱が疑われるならほかの部位でもう一度測ってみると安心です。
二度測って値が違ったら、どちらを信じればよいでしょうか?
赤ちゃんを落ち着かせてから同じ部位で測り直してみてください。部位が同じなら流れを読みやすくなります。値がずっとはっきりしないなら部位を一緒に記録しておき、気になるサインが一緒にあれば値に関係なく相談してみてください。
解熱剤を使った直後に測り直してもよいでしょうか?
使った直後はまだ効果があらわれる前なので、変化を見るのが難しいです。効果があらわれる時間をおいて測り直すと、実際に下がったか確認できます。使った時刻を一緒に書いておくと楽です。
最後にまとめると
値が少しずつ違って出るのは、たいてい部位・方法・機器の違いのためです。だから同じ部位を同じ方法で続けて測るのがかなめです。
部位ごとに値が違うのは自然なことです。勝手に数字を補正するより、どの部位で測ったかを値と一緒に残して伝えてください。
泣いたり飲んだり厚くくるんだ直後は避け、落ち着いてから測り直すと誤差が減ります。気になるサインがあれば、数字に関係なく相談してみてください。